「ねえ、お父さん」
幅広い橋のたもと。
平拓志(たいら・たくし)は父親の顔を仰ぎ見た。
「この先が【ショーサン区】?」
「そうだよ。これから一年間、お前が暮らす【小三区】さ」
父親が不安げな息子の肩を優しく叩く。
「みんな、拓志と同じ小学三年生だから、きっと楽しく過ごせるよ」
橋の入口を閉ざしていた鉄柵が開いた。
小学三年生の一団が向こう岸をめざして進み始める。
「ヘイ、タクシー!」
元気な声が背後から聞こえ、拓志の肩に重さが加わった。
腰をはさむ太ももを条件反射的に手で支えてしまう。
拓志におんぶされた女の子、
頼鳥ミノリ(よりどり・みのり)は彼の幼馴染である。
「行先は【ショーサン区】! 大至急でね!」
「じゃあ、お父さん、行ってくるよ」
拓志は駈け出し、同い年の群れに溶け込んだ。
「大丈夫ですよ」
拓志の父は、涙を流して娘を見送るミノリの両親を励ました。
まるで、自分に言い聞かせるように。
「あの子たちは、きっと戻ってきます。一年後、私たちのもとに」
遠ざかっていく子どもたちから、彼らは目を離さそうとしない。
警備兵が鉄柵を再び閉ざした後も。
いつまでも。
to be continued
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2009年02月05日
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