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2009年02月05日

ショーサン区の空に 第一回

「ねえ、お父さん」
 幅広い橋のたもと。
 平拓志(たいら・たくし)は父親の顔を仰ぎ見た。
「この先が【ショーサン区】?」
「そうだよ。これから一年間、お前が暮らす【小三区】さ」
 父親が不安げな息子の肩を優しく叩く。
「みんな、拓志と同じ小学三年生だから、きっと楽しく過ごせるよ」

 橋の入口を閉ざしていた鉄柵が開いた。
 小学三年生の一団が向こう岸をめざして進み始める。
 
「ヘイ、タクシー!」
 元気な声が背後から聞こえ、拓志の肩に重さが加わった。
 腰をはさむ太ももを条件反射的に手で支えてしまう。
 拓志におんぶされた女の子、
 頼鳥ミノリ(よりどり・みのり)は彼の幼馴染である。
「行先は【ショーサン区】! 大至急でね!」
「じゃあ、お父さん、行ってくるよ」
 拓志は駈け出し、同い年の群れに溶け込んだ。

「大丈夫ですよ」
 拓志の父は、涙を流して娘を見送るミノリの両親を励ました。
 まるで、自分に言い聞かせるように。
「あの子たちは、きっと戻ってきます。一年後、私たちのもとに」
 遠ざかっていく子どもたちから、彼らは目を離さそうとしない。
 警備兵が鉄柵を再び閉ざした後も。
 いつまでも。

to be continued
posted by gyao at 22:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ショーサン区の空に | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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